災害時におけるエレベーターの問題は、主に地震や火災、停電といった事態で発生する閉じ込め事故や復旧に時間を要する事です。特に高層マンションやオフィスビルでは、エレベーターの停止が生活や業務に大きな影響を与えます。
[主な問題点]
・超時間の密室:地震等でエレベーターが停止した場合、長時間閉じ込められる可能性があります。救助には時間を要するため、高層階マンションでは上下階の移動手段が失われ孤立するリスクが高まります。
・救助活動の困難:大規模災害発生時は、消防や救助隊が多くの場所へ出動することからエレベーターの閉じ込め救助にすぐに対応できない場合があります。
・パニック状態:密閉された空間で長時間過ごすことは、乗客の精神的な負担となりパニックを引き起こす可能性があります。
・復旧の優先順位:大規模災害では、閉じ込めが発生した病院等災害弱者が利用する施設のエレベーターが優先的に復旧されます。一般のオフィスビルやマンション等では復旧が後回しになる可能性が高いです。
・地震時管制運転装置:2009年以降に設置されたエレベーターには、震度4以上の揺れを感知すると最寄り階に自動停止する装置が設置が義務付けられています。閉じ込めを防止する安全策ですが、結果的に停止を招きます。
・火災時管制運転装置:火災発生時は、エレベーターが避難階(1階等)へ直行し、扉を開けて停止します。火災の際はエレベーターを使用せず、階段で避難することが原則です。
・停電時自動着床装置:停電した際には、バッテリーを使用して最寄り階まで自動的に移動し、扉を開ける装置が設置されているエレベーターもあります。
[対策・心構え]
1.エレベーター内での対処法
①全ての階のボタンを押す:揺れを感じたら、全てのかご内行先階ボタンを押して、最初に停止した階で降ります。
②落ち着いて救助を待つ:閉じ込められた場合は、非常用インターホンで外部と連絡を取り、冷静に救助を待ちます。閉じ込められても怪我をするケースは稀であり、酸素が無くなる心配もありません。
2.備蓄と事前準備
⓵エレベーター内の備蓄:簡易トイレ・保存水・食料・ライト・ラジオ等を備えた防災キャビネットを設置しておくことが推奨されています。
②非常用電源の確保:自家発電装置やバッテリー降下装置があれば、停電時においても避難階への移動が可能です。
3.建物管理者や居住者対策
①管制運転装置の導入:管理組合等で耐震性を高めるための「地震時管制運転装置」・「戸開走行保護装置」の導入を検討します。
②保守点検の定期的実施:災害時にエレベーターが正常に作動するためには、日頃からのメンテナンスが重要です。
③住民への啓発:災害時の行動マニュアルを共有し、エレベーターの使用禁止や階段利用を周知徹底します。
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